2020/06/23 HPEC データロガーの将来市場
HPEC (High Performance Embedded Computers = 高性能組込みコンピュータ)市場はプッシュ型の市場であるため、顧客の認知度と製品の普及が進むにつれて、実際の市場規模は大きく拡大していくと考えられています。AI、およびマイクロデータセンターを含むHPECの導入機会は下記の分野で見込まれています。
(1) レベル5の自動運転(農業、防衛などを含む)
(2) エネルギー
(3) 石油・ガス
(4) テレコム5G
(5) OTT(=Over The Top)メディアサービス(ビデオストリーミング、ゲームなど)
(6) インテリジェントビデオ解析
では、それぞれの具体例を見ていきたいと思います。
(1) レベル5の自動運転
自動運転車が絶えず状況を認識しながら自律走行をするためには、取り巻く環境情報を常時把握する高度なセンサ(RADAR、LiDAR、高解像度カメラなど)が必要です。それには、さまざまなセンサとのやりとりで集められる大規模なデータを処理し、エッジAI(人工知能)とディープラーニングのアルゴリズムを応用しながら、リアルタイムで車両を学習させていくことができるシステムが不可欠となります。
Eurotechの車載向けHPECは、他に類を見ない高い性能と堅牢なアプリケーションを兼ね備えており、レベル5での自動運転(ドライバーの介在を必要としない、完全に自動化された走行)の課題を解決し得るストレージやコンピューティング、ネットワーキング、エッジAIおよびディープラーニングの各機能を持ち合わせています。
続きは HPECはいかにしてエッジAIとディープラーニングを可能にするか をご覧ください。>
(2) エネルギー
- スマートグリッド/電力配給
リアルタイムでの設備モニタリングはIoTベースのインフラとしての大きな特長の一つで、 設備の状況認識とグリッド・インテリジェンスを駆使し、エネルギーデータ管理を大幅に改善するためのものです。これにより、発電所がどのように稼働しているかを把握し、革新的な意思決定をすることができます。
公益事業者や電力配給事業者は、フィールド機器からのデータをリモートで解析したり、そのデータをエンドユーザーへ還元したりできるIoTベースのアプリによって、電力消費状況を完全に把握できるようになります。
- エネルギー管理
インテリジェントなエッジデバイスを使うことで、ユーザー側は、どのようにエネルギーを消費しているかを把握することができ、電気の無駄遣いをなくし、より良いエネルギーの使い方を実践することができます。
インテリジェント・デバイスに接続されたスマートメーターは、事業者にフィールド上で収集したデータに基づくビジネス上の意志決定の機会をもたらします。また、エッジコンピューティングやコグニティブ・コンピューティングによるアナリティクスが、データセンターやネットワークの負荷、またその費用を削減し、新しいビジネスモデルを確立します。
新たなIoT技術は、エネルギー管理において、最適化されたグリッド性能、予兆保全、運用改善、そしてフィールド業務の単純化といった効果をもたらします。
- インテリジェント・ビルディング
ビルなどの建造物に設置されたスマートメーターとインテリジェント・エッジデバイスは、エネルギー消費に関する有用なデータを収集します。
このようなスマートデバイスが、建造物とスマートエネルギーグリッドとを接続し、データアナリティクスとリモート・コントロール機能を通じて効率的なエネルギー管理を可能にします。
事業者はこのようなリモートデバイス管理や予兆診断といった真の付加価値サービスに投資をすることで、顧客とより良い関係を築くことができます。
また、こうしたデータを利用して、フィールドの作業管理費用を削減し、保守効率を改善することも可能です。
(3) 石油・ガス
石油プラットフォームでは、日々のデータ生成量がかなり大きなものとなり、データセンターからリモートでエラボレーションをするのはほぼ不可能なため、HPECコンピューティングが必要とされています。
- 液化天然ガス施設でダウンタイムが発生した場合、1日あたり2,500万ドルの損失
- 中規模の液化天然ガス施設では毎年5回程度ダウンタイムが発生
- 北海油田/ガス事業の平均稼働率は73%
- 標準的な衛星リンク速度は64kb~2Mbit/s(1日分のデータを12日かけて転送)
- 平均的な規模の石油プラットフォームでは1日に2TBのデータを生成
(4) テレコム5G
テレコム5G(第5世代のセルラーネットワーク技術規格)は、2019年に世界中の携帯キャリアが展開を開始し、現在の主流となっている4Gネットワークの後継として普及が広がっています。
帯域幅の拡大により、5Gではセルラーネットワークのような携帯電話サービスだけでなく、ノートパソコンやデスクトップコンピュータなどの一般的なインターネットサービスのプロバイダとしても、ケーブルインターネット等のISPと競合し、IoT/M2M分野における新たなアプリケーションの実現が期待されています。尚、現在の4G携帯端末は5Gの新しいネットワークを使用することはできません。(4G/5G併用型であれば利用可能)
MEC (モバイルエッジクラウド / マルチアクセスエッジコンピューティング)
MECとはまさにHPEC技術のことで、コアネットワークから重たいトラフィックをオフロードするのに不可欠なものです。
「5G MECは5Gグローバル産業チェーンの主戦場になると位置づけられており、その規模は10兆ドル以上とも予想されている」– Huawei
MECがエッジで運用する5Gの主要サービス
- ネットワーク機能の仮想化
- キャッシング
- AI(推論トレーニング)
- 非ネットワーク、特定アプリケーション
(5) OTT(=Over The Top)メディアサービス
Limelight Networks社 のシニアセールス・ディレクター Jaheer Abbas氏は以下のように述べています。
「ひとつの新興ビジネスだったオーバー・ザ・トップ(OTT)ストリーミングは、いまや私たちの動画利用を一変させる一大テクノロジーへと成長しています。そこは長らくNetflixの独壇場でしたが、いまではDisney、Amazon、Apple、楽天、MX Playerなどのテクノロジーとコンテンツに強みを持つ企業が、自社のプラットフォームを介して何百万ものオンデマンドやライブイベントなどのサービスを提供しているのです。
2022年までに、世界のOTT収益は834億米ドルに急増すると見込まれています。
今ある課題として、世界のオンライン視聴者の43%が、動画のリバッファリングに最もストレスを感じると回答しており、29%の視聴者が最初のリバッファリング時に動画の視聴を停止し、さらに37%が2回目以降に視聴を止めると報告されています。
これはメディアがエッジコンピューティングを活用して、高品質の動画とストリーミングパフォーマンスを確保しながら、レイテンシーを短縮させようとしている大きな理由となっています。」
データセンターからエッジへの移行に向けたトレンド
- レイテンシー(端末側)の短縮
- コアネットワークのレイテンシーの短縮
- 地域コンテンツ配信の最適化
(6) インテリジェントビデオ解析
よりスマートなビデオセキュリティシステムでは、トラフィック管理や人数(通行者/乗客)などの状況をレポートするにあたり、時刻やその他の変数ごとにアクティビティ・アナリシスを実施します。監視システムにビデオ解析ソリューションを追加することで、実際のビジネスにおけるより良い洞察を得られるようになり、ビジネスオペレーションを改善することができます。例えば、トラフィックカウントへの対処や、小売フロアプランの効果の最大化、各業務パフォーマンスのモニタリング、サプライチェーンの管理、そして包括的なレポートの提供を行うことができます。
高性能なデータロガーは、インテリジェントセンサーに接続することができます。Eurotechでは、組込みIoT環境のさまざまな接続性とデータ管理アプリケーションに対応したスマートセンサー、およびデバイスをリリースしています。
人数(乗客)のカウンターから環境監視システムまで、インテリジェント・デバイスでデータを収集し、このデータをさらに分析するためIoTインフラストラクチャへと送信します。
これらのIoT対応デバイスは、お客様のビジネスモデルに変革をもたらし、さまざまな垂直市場でのスマートアプライアンスの提供によって、デジタル化へと導いてくれることでしょう。
Eurotechのカウンターは、バス、電車、ビルなど、アクセス監視が必要な場所の出入り口の上に設置できるコンパクトな自律型デバイスです。IoTとクラウドインフラを組み込むことで、車両や公共交通機関の効率を最適化する管理アプリケーションとの統合が可能となり、列車やバスの路線やスケジュールを乗客の流れに合わせて調整することができます。3Dビジョンをベースにしたこのパッセンジャーカウンターは、高精度のパフォーマンスだけでなく、堅牢設計により過酷な環境下でも使用できる高い信頼性を誇ります。
Use Caseについて
最後に今後、高性能HPECデータロガーをインテリジェントセンサーに接続することで考え得る使用例ついてお伝えします。
自治体の災害管理
- 環境品質、汚染、有毒ガス、火災、地震、人為的災害のリアルタイム分析
- 災害時に避難する必要のある人数の把握
- 緊急時の自家用車の避難経路や通路の把握
大規模農業における資源管理の自動化
- 地質、土壌水分のリアルタイム解析
- スマート灌漑 (監視と管理)
- 収穫管理
建設業
- コンクリート品質の最適化から建築物のモニタリング
- 水分によるダメージの検出
- 気象モニタリング