2021/02/09 オープンソース型VSベンダロックイン型プラットフォーム 顧客にとってのメリットは?
この記事では、ベンダロックイン型のプラットフォームよりもオープンソース型のプラットフォームの方が有利であることを示し、セールスポイントや顧客へのアプローチ戦略のヒントを考えてみたいと思います。
ベンダロックインの影響
経済学において、ベンダロックイン(独自ロックインまたは顧客ロックインとも呼ばれる)とは、顧客が使用する製品やサービスをベンダに依存し、大幅な切り替えコストなしには別のベンダの製品やサービスが使用できなくなることを意味します。 市場参入の障壁となるロックインが行き過ぎれば独占禁止法の違反につながる可能性があります。
ベンダロックインの大きな特徴はいわゆる囲い込みです。このアプローチを図るベンダの製品は(少なくとも机上では)多くの産業においてうまく連携して動作するように設計されており、顧客の要求仕様に合わせて調整も可能です。しかし実際には要求に完全に応えていない場合も多く、移行をするにもコストとダウンタイムが発生するため難しいということが多々あります。
顧客はベンダにそれらの課題の解決を求め、ベンダは顧客の期待に応えるため関連製品の販売やカスタマイズを行います。 多くの場合、このプロセスには長い期間と有償のサポートが必要となり、最終的に顧客は購入したソリューションに適応するため、当初期待していた機能やサービスの一部を諦めなければならないことがあります。要するに課題を解決するにも限界があり、それまでに支払ったコストを正当化しなければならないのです。
よって顧客の観点からすると、ベンダロックインのアプローチは短期的な開発には有利ですが、長期的な継続には大きなリスクが伴います。 なぜならシステムの更新や機能の拡張には時間がかかり、画一的であるためです。仮にユーザが導入後すぐに機能の欠如に気づいたとしても、次の更新までは何年も待たなければなりません。あるいはソフトウェアが新しいバージョンになっただけでも、作業ルーティンやトレーニング、下位互換性に大きな影響を及ぼしかねません。
ベンダロックインは標準化とは相反するもので、クラウドコンピューティングの採用においても大きな障壁となっています。 ベンダロックインの問題に対する現在のソリューションや取り組みは総じてテクノロジ指向で、クラウド環境でのベンダロックインの複雑性を分析する研究は限られています。 その結果、ほとんどの顧客はベンダからサービスを受ける際にアプリケーションの相互運用性やポータビリティを阻害する独自の基準に気づいていません。
顧客が特定のクラウドプロバイダに囲い込まれていることに気付くことも稀にありますが、 ロックインの状況下ではデータベースのセットアップ後にデータベースを移動することは非常に難しく、特にデータをまったく異なるタイプの環境に移植し、データを再フォーマットする場合などでは大きな足かせとなる可能性があります。 また、サードパーティのソフトウェアが一旦ビジネス上のプロセスに組み込まれると、ビジネスがそのソフトウェアに完全に依存してしまう可能性もあります。
長期的に見れば、ベンダロックインには次の3つの大きなビジネスリスクがあると言えます。
- 十分な契約上のレバレッジがなく、ベンダに依存してしまう
- コストをかけず他のベンダへ切り替えたり、統合することができない
- システムのアップデートやセキュリティパッチもベンダに依存
オープンソースソフトウェアの強み
オープンソースコードは、ボランティア・コミュニティによって作成や保守がされており、使用から編集はもちろん、その発展への貢献を希望するすべての人々が利用できます。そしてこのオープンソースソフトウェアには、セキュリティ、柔軟性、コミュニティサポートなどの大きな利点があります。
オープンソースソフトウェアは、現代のビジネスの世界で大きな成長を遂げています。 中でもLinuxは最も有名なオープンソースコミュニティで、世界中のビジネスで利用されているオペレーティングシステムです。
オープンソースソフトウェアを使用することにより、イノベーションの促進、開発のスピードアップ、コストの削減など、企業はテクノロジの最先端をキープすることができます。
さらにオープンソースソフトウェアは、常にタスクに取り組む開発者が集まる大きなコミュニティのため、営利目的で開発されたソフトウェアよりも信頼性が高くなります(バグが少なくなります)。
また、潜在的にはるかに長いライフが見込まれます。ソフトウェアベンダが廃業してしまったり、製品ラインを交換あるいは終了してしまった場合、顧客はそのサポートや、バグ修正、セキュリティパッチ、将来のバージョンアップの可能性を失ってしまいます。 そうしたケースを避けるため、ビジネスクリティカルなアプリケーションにオープンソースソフトウェアを採用しておけば、社内のソフトウェアプログラマやサードパーティで継続させていくことが可能です。
まとめると、オープンソースソフトウェアには、次の3つの優れた点があると言えます。
- 信頼性
- 安全性
- 長期ライフサイクル
前述の通り、オープンソースソフトウェアには顧客を満足させるための魅力的なポイントがいくつかありますが、それはまさにスピーディ、高信頼性、セキュア、最先端テクノロジといった、Eurotechグループが持つソリューションと一致しています。
IoTは、収益機会の増加や運用効率の改善、そしてデジタルトランスフォーメーションによって生み出される新しい製品やサービスを体現しています。この変革を実現するには、各機能やオペレーション、また各部門やビジネスユニット全体でのコラボレーションを前提とした設計、計画、実行が大切です。
IoTは新たなチャレンジを創造する機会でもあります。IoTマーケットの急速な発展に伴い、 多くのプレーヤや規格もまた進化しています。 独自のIoTプラットフォームを選択してしまったアーリーアダプタ組はいま、限られた機能に縛られ、特定のベンダに縛られ、かつての選択を再考しています。 そうした顧客の多くがIoTによるイノベーションと継続的開発の懸け橋としてオープンソースの価値を認識し、オープンソースによる代替案を模索しています。 避けては通れないIoTエンドツーエンドの課題に、完全に対処できるシングルプロバイダは1つもないということを理解しているのです。
EurotechのEveryware Software Framework (ESF)
「Everyware Software Framework(ESF)」は、Eurotechがディストリビュートおよびサポートを行うエンタプライズ対応型IoTエッジフレームワークです。 IoTゲートウェイ用のオープンソースJava / OSGiミドルウェア“Eclipse Kura”を基に開発されたESFは、プロビジョニング、高度なセキュリティ、リモートアクセス、診断/監視といった機能を付加しています。
ESFは各種フィールドプロトコル(Modbus、OPC-UA、S7、FANUC、J1939、J1979、BACnet、IEC 60870-5-101、IEC 60870-5-104、DNP3、Mバスを含む)とMQTT接続機能、さらにWebベースのビジュアルデータフロープログラミング(フィールドからデータを取得し、エッジで処理し、IoTクラウドプラットフォームに公開)をサポートしています。 また、EurotechのIoT統合プラットフォーム「Everyware Cloud(EC)」とのインテグレーションにより、リモートデバイス管理が可能です。
IoTエッジフレームワーク
エッジコンピューティングは、データソースにより近いシステムネットワークのエッジ側でのデータ処理を可能にしました。 データソースまたはその近くで分析の実行や知識の獲得が可能になったため、センサとデータセンタの間に必要な通信帯域幅の削減もできるようになりました。IoTゲートウェイは、エンタープライズレベルのソフトウェアスタックの実行に加え、エッジ側でのアグリゲータおよびコントローラーとしても機能できるため、エッジコンピューティングソリューションの基盤として最適です。
Eurotechがディストリビュート、サポートをするEveryware Software Framework(ESF)はIoTゲートウェイに特化した、オープンソースJava / OSGi IoT Edge Framework “Eclipse Kura” の言わばエンタプライズ版です。 EurotechのIoTインテグレーションプラットフォーム であるEveryware Cloud(EC)との統合によって、セキュリティ、診断、プロビジョニング、リモートアクセスなど、Eclipse Kura をさらに強化しています。
ESFの IoTエッジフレームワークで実行できる主な3点を挙げてみます。
- IoTエッジコンピューティングアプリケーションの開発・管理
- 産業用IoTプロトコルを通じたIoTデバイスとクラウドサービスの簡単接続
- データ管理、分析、ルーティングを前提としたデータフローの視覚的構築
Java / OSGiをベースとしたESFとそのアプリケーションは、さまざまな異なるハードウェアアーキテクチャ間でもポーティングや更新ができます。 さらにESFは業界をリードするオープンソースのEclipse Kuraもベースとしていますので、ベンダロックインの防止や、ソフトウェアへの投資を確実なものとしてくれるでしょう。
ESFのセキュリティ強化
ESFのセキュリティ拡張機能では、ESF 3.1.xのセキュリティ機能を強化し、セキュリティと柔軟性のレベルを高め、開発者がESFインスタンスのコードで実行できることを簡単に指定できます。
さらなる詳細はESF documentationよりご覧ください。
- Critical analysis of vendor lock-in and its impact on cloud computing migration: a business perspective – Journal of cloud computing
- Vendor Lock-In Learning Objectives – Cloudfare
- Benefits of Open Source Software for Businesses – Bluespark
- An enterprise, end-to-end open source architecture for IoT – RedHat
- Esf documentation – Eurotech
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