社長インタビュー:「半導体めぐる米中対立、欧州は蚊帳の外」

2021年4月12日付、イタリアの新聞「La Repubblica」(最も読まれている新聞の一つ)に、当社社長ルドヴィコ・チフェッリのインタビュー記事が掲載されました。世界的な半導体不足と当社の新製品であるExpEtherボードに関する記事となっています。
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Ciferri Interview
原文記事のスクリーンショット (repubblica.it)

アドバネットの代表取締役社長であるルドヴィコ・チフェッリ氏は以下のように述べた。

「欧州は半導体の分野において米国に遅れをとっていますが、中小企業にも役立つイノベーションの余地はあります」

イタリア(ローマ) – 「米中間の“マイクロチップ問題”は、“半導体の新しい世界秩序”を生み出している」と、自動車や産業機器の頭脳となる小型コンピュータを設計・製造する日本企業アドバネットの社長を7年間務めているルドヴィコ・チフェッリ氏は語る。アドバネットは、従業員300人のイタリアのグループ企業ユーロテックの傘下にあり、日本国内に生産工場を持ち、防衛を含む様々な分野向けに日立や三菱といった日本の大企業と取引がある。

そして、同社はハイテク大手のNECとのコラボレーションにより、中小企業の自動化を支援するIPコア搭載のボード2製品を発表したばかりだ。

世界の多くの産業で半導体が不足している状況にありますが、何が起こっているのでしょうか?

これは、世界的なCOVID-19パンデミックの中で、半導体メーカーの増産が追いつかない一方で、逆に巣ごもり需要で電子機器製品の購入が爆発的に増加するなど予想を上回る需要増が発生し、需要と供給のバランスが崩れてしまったことが原因でしょう。加えて、アメリカが中国メーカーをブラックリスト化したことも影響していると考えられます。

半導体米中主導権競争は、業界にどのような影響を与えるのでしょうか?

中国市場は基本的に国内生産・国内消費市場になるという、明確な分離に向かっていると思います。

日本、韓国、台湾のメーカーにとって、中国は決定的なアウトレット市場であり、米国は同盟国を説得して中国を手放させることができるのでしょうか?

すでに幾つかの台湾企業にとっては「米国のために生産するのか、中国のために生産するのか」と問われているようなものです。この流れがどこまで続くのかを理解する必要があります。日本の大手企業は中国での存在感を維持し続けているものの、どこまで他の市場と切り離していくことができるのかはわかりません。一方、米国には “二股をかける“政策は通用しません。日本では政治的な方向性は明らかに切り離しの方向のようです。

中国政府は半導体開発に数十億ドルを投資しています。果たして、米国やその同盟国との技術格差を埋めることはできるのでしょうか?

中国の主要メーカーであるSMICの市場シェアは非常に低いです。世界の半導体メーカーの3大トップは、台湾のTSMC 、韓国のサムスン、米国のグローバルファウンドリーズです。いずれも中国への技術ノウハウの伝達を減らしているので、中国政府は部分的には巻き返しを実現するでしょうが、最先端チップでは難しいかもしれません。米国の戦略は、TSMCとサムスンにフォーカスして、“自国の”インテルが次世代チップで巻き返しに出るまで、今後5年間の供給をコントロールすることです。一方の中国は、それまでに周回遅れのレースを挽回する必要がありそうです。

EUでさえ、半導体の国内生産について考え始めているようですが…

それは正しい選択では無さそうに思います。TSMCはすでに1,000億ドルを投資しており、インテルも200億ドルを投資します。バイデン政権では1,500億ドルの投資を計画しています。EUは遅れをとっており、今さら生産能力の増強に投資しても意味がありませんし、そもそも欧州単独で消費するだけの十分な市場規模が見出しにくいのです。次世代チップのリーダーになるには、300億ドル以上の投資が必要です。欧州にとっては、より少ない投資で済むマイクロプロセッサ設計のように、すでにコンピタンスを持っているところで地位を確立し、既存の技術インフラの近代化を目指す方が理にかなっていると考えます。

これはサッカーの “Bシリーズ“の試合のようなものですか?

5ナノメートル半導体のような先端技術が話題になりますが、自動車に搭載されている多くの半導体のように、高度ではなくとも基礎的なマイクロプロセッサの世界があります。アドバネットがNECと開発した製品は、新しい機械に買い替えることなく、旧型の産業機械をアップデートし、オートメーションプロセスへ統合することに使われるものです。インクリメンタルイノベーションという事ができ、中小企業に現実的な改善をもたらすものです。そして、半導体不足の問題を補うことにもつながります。

ドラギ政権は“黄金の力”を使って、ロンバード州にある半導体企業、Lpe社が中国から買収されるのを阻止しましたが、正しい選択だったのでしょうか?

イタリア政府は、育成すべき戦略的分野やサプライチェーンがあることを認識しています。過去に起きたスーパーコンピュータの前例もあるように、欧州がそれらを失うことは避けなければなりません。